サーバント・リーダーシップ入門 サーバント・リーダーシップ入門!ミッション、そして奉仕と献身の経営
公開日:2021年3月25日

ビジネス書サマリー「サーバント・リーダーシップ入門!ミッション、そして奉仕と献身の経営」

5つのポイント
  1. リーダーシップとマネジメントは似て非なるもの
  2. ミッションの名の下に奉仕者になるのがサーバントリーダー
  3. サーバントリーダーシップはリーダーの深層にある哲学
  4. 変革のためにサーバントリーダーシップは有効
  5. 誰もが日々の生活、仕事からサーバントリーダーシップを得られる
はじめに

トレンドのビジネス書を要約したビジネスリーダー向けの役立つコンテンツです。今回は池田守男氏と金井壽宏氏の著書『サーバント・リーダーシップ入門(かんき出版)』の要約をお届けします。

サーバントリーダーシップとは、端的に言うと「ミッション遂行のために、リーダーが奉仕と献身によって従業員やチームメンバーを支える」と言うリーダーの哲学・思想です。「奉仕と献身」から想像できる通り、敬虔なクリスチャンによって考案されたためキリスト教の影響が濃く、本書をはじめ、他のサーバントリーダーシップの本でもキリスト教の考え方や例え話が随所に見られます。

明治維新以降キリスト教の精神は日本に浸透しており、日本人の昔からの道徳や倫理、民主主義の考え方にも親和性があるため、宗教やキリスト教に抵抗ある人でも共感できることは多いでしょう。本稿では、サーバントリーダーシップは従来のリーダーシップ論と何が違うのか、どうすれば身に付き、どのように活用できるのかを読み解いていきます。

1. そもそもリーダーシップとは?

そもそもリーダーシップとは?

「ビジネス書サマリー」は、トレンドのビジネス書から、ビジネスリーダーに役立つポイントを要約してお伝えするコンテンツです。今回取り上げるのは、池田守男氏と金井壽宏氏の著書『サーバント・リーダーシップ入門(かんき出版)』です。本書では、リーダーシップを以下のように説明しています。

『リーダーシップはとてもシンプルな現象である。信じてついていってもいいと思える人に、フォロワーたちが喜んでついていっている状態がリーダーシップという社会現象であり、そのように信じられる人に備わっているものがリーダーシップの持ち味(パーソナル・アセッツ~パーソナリティーや能力、価値観、エネルギー水準などを含む)である。』

フォロワーとはリーダーに従う人であり、会社では部下、サークルなどではチームメンバーです。ここで重要なのは、「喜んでついていく」と「パーソナル・アセッツ」。スピード違反をして警察官から「免許証を出して」と言われて従うとき、喜んで従ったり、警察官の人格を信じて従ったりはしません。単に法律に従って渋々と応じるだけで、警察官にリーダーシップはありません。このように考えると、リーダーシップとマネジメントの違いも見えてきます。

『管理のための仕組みがあり、予算を持ち、部下の評価権(人事権)があるので、部下もいう事を聞いてくれるという側面がある。(中略)このような制度、仕組みに依拠し、他の人々を通じて事を成し遂げるのが「マネジメント」である。』

上司は全く尊敬できないが、評価権を持っているため渋々従っている人もいるでしょう。上司は部下がついてくるので、自分にリーダーシップがあると錯覚するかもしれません。しかし、この場合上司は会社から与えられた職位と制度に乗っかっているだけです。

経営管理制度(マネジメント)を利用して人を動かすこと自体は、悪いことではありません。会社を効率的に運用していくためにも、管理職が管理しやすい環境を整えることは重要です。しかし変革が必要な状況に陥ったとき、組織を動かす能力がリーダーシップなのです。

2. サーバントリーダーシップとは?

金井氏は、サーバントリーダーシップを以下のように考えます。

『下手に出て召使いのように振る舞うことではけっしてない。なんでもいいから相手の尽くすというのでもない。「ミッション(使命)の名の下に奉仕者となる」という高貴な面が、非常に重要になる。』

またサーバントリーダーシップを伝道している石田量氏による定義は、以下の通りです。

『「まず相手に奉仕し、その後相手を導くものでる」という実践哲学をサーバントリーダーシップといいます。』

つまり崇高なミッションを掲げ、従うフォロワーを奉仕(サポート)するのがサーバントリーダーシップです。

サーバントリーダーシップにおける究極の理想は、イエス・キリストです。イエスは神の真理を広めると言うミッションの下、易しい例え話を説いたり、心身が病んだ人を癒したりして弟子や信者を導いていきました。同様に、ミッション実現のために部下に丁寧な指導やケアなどをしながら導くのが、職場におけるサーバントリーダーシップと言えるでしょう。

サーバントリーダーシップは敬虔なクエーカー教徒であるロバート・グリーンリーフによって提唱されたものなので、キリスト教への一定の理解は不可欠です。クエーカー派は清教徒革命の中で生まれたプロテスタントの宗派で、質素・誠実・平和・平等を信条としており、グリーンリーフがサーバントリーダーシップを着想したのも頷けます。ちなみに、新渡戸稲造は著名なクエーカー教徒です。

キリスト教の考え方を学ぶには、内村鑑三の「後世への最大遺物・デンマルク国の話」「代表的日本人」(いずれも岩波文庫)をおすすめします。多くのリーダーに読まれており、社会人としてどう生きるかを学べるでしょう。内村鑑三は新渡戸稲造の親友であり、内村が提唱した無教会主義は、クエーカー派の影響を受けています。

3. サーバントリーダーの特徴

本書ではサーバントリーダーシップの特徴を、グリーンリーフ・センター・アメリカ(サーバントリーダーシップの啓蒙を行う非営利団体)の所長、ラリー・スピアーズが提唱した「スピアーズの10属性」として紹介しています。

スピアーズの10属性

スピアーズの10属性

金井氏は、10属性について以下のように述べています。

『サーバントリーダーを目指す人、本人の誠実さ、高潔さが欠けていればこの属性リストでさえ、十分条件を示すものではない。
サーバントリーダーになるための出発点として、まずこの表にあるような持ち味が自分に備わっているかどうか、自然にできるかどうか、育成できそうか、経験不足でまだ自分に備わっていないのはどの属性かといったことを探るときのヒントとして、これらの項目リストを活用するのが良いのではないだろうか。』

一般のリーダーシップ論では、リーダーのスタイルを「専制型」「民主型」「レッセフェール(自由放任)型」などに分類しますが、「サーバント型」は存在しません。サーバントリーダーシップは、各々のスタイルのリーダーの深層にある基本哲学です。金井氏は以下のよう説明しています。

『表面的には専制的で強烈だが、スピリットにおいてはサーバントリーダーだと言う人もありえる。また、民主的に振る舞っていて、みんなの意見をきいているようだが、ミッションがなく、サーバントリーダーとは成り立ちが違う場合もあるだろう。』

つまりサーバントリーダーは分類不能であり、各々のスタイルのリーダーがミッションの下、フォロワーを支えながら目標に邁進するかどうかがサーバントリーダーか否かの分かれ目と言えそうです。

4. サーバントリーダーによる経営改革

本書では、大手化粧品会社資生堂の第 12代社長の故・池田守男氏(本書の出版は2007年、池田氏は2013年に逝去)によるサーバントリーダーシップの実践例を紹介しています。池田氏は東京神学大学神学部出身のクリスチャンで、新卒時から秘書職に就き、計5人の社長に仕えてきました。

池田氏が社長に就任した2001年当時、外資系・新興系の攻勢や、ドラッグストア・通販など販売チャネルの多様化などによって化粧品業界は大きく変化し、既存の国内化粧品会社は危機的状況でした。

当時の資生堂の販売スタイルは、以下の通りです。

  1. 販売店に商品を卸した時点で売上計上かつ売上至上主義
  2. 販売店の仕入量によって報奨金を出す
  3. 化粧品の専門家(ビューティーコンサルタント)がお客さまに販売

競争が激化する中、資生堂は売上向上のため報奨金を支払い、現場の状況を十分に把握しないまま販売店に大量の商品を卸した結果、在庫が積み上がり返品が発生します。さらに本社が新商品を続々と投入するので、ビューティーコンサルタントも顧客も困惑していました。

そこで池田氏は店頭での販売を重視し、顧客との接点であるビューティーコンサルタントを中心としたサプライチェーン改革に乗り出しました。実施した改革はたくさんありましたが、本書で紹介されているのは主に以下のものです。

  • お客さまとビューティーコンサルタントが出会う店頭を基点とする
  • 店頭での販売実績を重視し、売上に応じた報奨金を出す
  • POSを導入し各店舗の売れ筋商品を細かく把握
  • データに基づき100のブランドを30に絞り込み現場の負担を軽減

これらに対応するために、組織改革も行います。本社とビューティーコンサルタントの距離を縮める施策やライフワークバランスの充実、中間層(支社長や営業担当など)の意識改革(顧客のためにビューティーコンサルタントを支える)、若手の登用による若返りなどです。従来のピラミッド型組織からサーバントな逆ピラミッド型組織への転換を図りました。

社長が中間層を支え、中間層が店頭を支える組織への転換

社長が中間層を支え、中間層が店頭を支える組織への転換

サーバントリーダーシップによる改革(顧客とビューティーコンサルタント起点の改革)は在庫削減に成功し、次世代にも引き継がれ、現在資生堂は人気の就職先の一つになっています。一方で、改革の遅れから経営破綻寸前になり、産業再生機構の下で再建を図った同業他社もあります。

5. サーバントリーダーシップの身に付け方

サーバントリーダーシップは、キリスト教だけのものではありません。仏教でも鑑真や玄奘三蔵などが、高い志を持って人々を動かし、偉業を成し遂げました。産業界では、松下幸之助が嗜好品であった家電に対し「水道の水のように低価格で良質なものを大量供給する」と言うミッションを掲げ、福利厚生などの充実によって社員の生活を守りながらそれを実現しました。これらもサーバントリーダーシップと言えるでしょう。

サーバントリーダーシップはトップだけのものかと言うと、そうではありません。金井氏は言います。

『仕事ができる人は、上の人を動かすのもうまいということだ。直属の上司だけでなく、他部署の上司さえうまく動かしたりする。(中略)それができるのは、本人が日頃から真剣に仕事に取り組んでいて、その姿勢が認められているからであろう。また上司に動いてもらうためにはっきりともの申すのも、本人が考えるミッション、それを果たそうとする志に支えられたまっとうな意見だからだ。
意味あるものが背後にあって人に動いてもらう経験を若い時からしている人は、人を動かすうえでの志や信念の重要性をしっているので、のちのちサーバントリーダーになりやすいのではないか。』

クリスチャンであったこともありますが、池田氏のサーバントリーダーシップも、秘書時代に真摯に当時の社長に「奉仕と献身」をする中で培われたのでしょう。やはり若いときから、努力や心がけが大切なのです。

「奉仕と献身」は、仕事だけでなく子育てや親の介護、地域活動・ボランティア活動などプライベートでも必要であり、これらの経験が会社でのよりよい仕事を実現できると金井氏と池田氏は考えます。

皆さんも、まずは身近なことから「奉仕と献身」を実践してみてください。その際は、「スピアーズの10属性」をときどき振り返ってみることをおすすめします。

『サーバント・リーダーシップ入門』は、キリスト教に馴染みのない人がサーバントリーダーシップを学ぶ際のよいテキストになるでしょう。まずは本書を手に取り、身近な人や地域社会での活動を通じて「奉仕と献身」について考えてみることが第一歩となるでしょう。

『サーバント・リーダーシップ入門』
(クリックすると外部サイトに移動します。)
金井壽宏+池田守男、2007年、かんき出版
ISBN10: 476126473X ISBN13: 978-4761264734

鈴木 光晴(すずき みつはる)
鈴木 光晴(すずき みつはる)

投信投資顧問や生命保険会社の資産運用部で社債や国債などのポートフォリオ管理(ファンドマネージャー)、新電力会社(上場)の経営企画部で経営計画の策定や子会社売却などに携わる。

2018年4月に(株)スパックテクノロジーズを設立。農業金融プラットフォームの開発を進め、日本の農業問題に挑戦している。

工学修士(大阪府立大学大学院)、経営学修士(筑波大学ビジネス院ビジネス科学研究科)

BPO Prácticaでは、お困りの問題を解決するBPOコンテンツを多数展開しております。

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