デザイン思考〈第4回〉「組み合わせてアイデアを生もう!デザイン思考③」
公開日:2020年12月24日

デザイン思考〈第4回〉「組み合わせてアイデアを生もう!デザイン思考③」

5つのポイント
  1. アイデアは「ひらめき」ではなく「単なる組み合わせ」
  2. 「量」の確保が「質」を高める
  3. チームのチカラで「量」を確保する
  4. アイデアは「実現できるか?」「利益を生むか?」ではなく「役に立つか?」で選ぶ
  5. 組み合わせて「よいアイデア」を生み出す
はじめに

前回は、デザインテーマに関する「問題」を定義しました。次は、問題の「解決策」となるアイデアを生み出します。

アイデアは「ひらめき」や「センス」で生まれるイメージがありますが、実は誰でもアイデアを生み出せる方法があります。それは、アイデアを「組み合わせる」ことです。アイデアは、「既存のもの同士を新しく組み合わせもの」に過ぎません。組み合わせるアイデアをたくさん集めて、いろいろなパターンで組み合わせればあたらしいアイデアを生み出せます。

つまり、質の高いアイデアを生み出すためには「量」が必要になります。アイデアの「量」を確保するためには、チームでアイデアを出し合うのが近道です。

また、アイデアを選ぶ際のコツもあります。大半のアイデアは、生まれたばかりの「ジャストアイデア」です。それらを「収益性」や「実現性」などで評価すると、残るのは「誰も反対しないがつまらないアイデア」だけになります。それではイノベーションを起こすことはできません。

アイデアの初期段階では「誰かにとって役に立つか?」「革新的か?」といった観点で評価し、イノベーションにつながるアイデアが埋もれないようにしましょう。

1. センスや才能がなくてもアイデアは生み出せる

デザイン思考は「前例のない仕事のためのレシピ」です。「前例のない仕事」を始めるにあたり、デザイン思考ではまず「顧客の理解」を実践することで「今まで知らなかったこと」を知ります。その中から「供給側の盲点」を発見し、解決すべき問題を決める「問題定義」を行います。
ここからは、定義した問題の「解決策」を考える段階です。解決策となり得る具体的なアイデアを生み出しましょう。

アイデアを生み出す際「なかなかよいアイデアが浮かばない」と悩む方は少なくありません。アイデアは「浮かぶ」や「降りてくる」といった言葉がよく使われますが、これは「ひらめき」や「思い付き」で「偶然生まれるもの」というイメージが強いからではないでしょうか?「アイデアはセンスや才能が重要だから、自分には向いていない」と諦めてしまう人もいます。

ご安心ください。デザイン思考は「前例のない仕事のためのレシピ」です。センスや才能がなくても、誰でもアイデアを生み出せます。ここからは、アイデアを生み出す具体的な方法を解説します。

前例のない仕事のためのレシピ

2. アイデアは単なる「あたらしい組み合わせ」

ジェームス・W・ヤング氏の著書では、以下のように書かれています。

『アイデアは既存の要素の新しい組み合わせ』

※引用:「アイデアの作り方」(1988年・CCCメディアハウス)

つまり、すでにあるものをあたらしく組み合わせれば、それは「あたらしいアイデア」なのです。「組み合わせではない、全くあたらしいアイデアもあるのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、少なくとも私は「既存の要素が一切ないアイデア」は見たことがありません。

例えば革新的な製品の代表格である「iPhone」も、「電話」「パソコン」「iPod&iTunes」「カメラ」「タッチパネル」など、既存のものを組み合わせただけです。今話題の「TikTok」も「動画×投稿×短時間」なので、YouTubeとTwitterとInstagramを組み合わせたようなものと言えます。

実際にアイデアを商品化し、社会に影響を与えるためには努力や工夫が必要ですが、最初の一歩である「アイデア」の時点では、革新的な商品やサービスであっても「既存のものを組み合わせたもの」に過ぎないのです。

この「組み合わせ」という考え方に、納得できない方もいるかもしれません。しかし、この考え方の最大のメリットは「誰でも再現できる」ことです。組み合わせるだけなら、センスや才能がなくてもできますよね?アイデアは、「浮かんでくるもの」ではなく「組み合わせて作るもの」。これならば、具体的なやり方をイメージできるはずです。

ちなみに、「イノベーション」という言葉を最初に定義したオーストリア出身の経済学者ヨーゼフ・シュンペーターは、イノベーションを「新結合」と表現しています。「あたらしい組み合わせ」とほぼ同義です。

3. よいアイデアは、たくさんのアイデアから生まれる

「アイデアは組み合わせであることはわかったが、よいアイデアを生むためにはどう組み合わせればよいのかわからない」という方もいるでしょう。

ノーベル賞を2回受賞(化学賞・平和賞)したアメリカの化学者ライナス・ポーリングは、以下のように述べています。

『大量のアイデアと何らかの選択の原則がないと、いいアイデアには巡り合えないでしょう』

※引用: Weblio辞書「ライナス・ポーリング」

多くの材料(アイデア)があれば組み合わせがたくさんできるため、結果としてよいアイデアを生み出せるということです。

材料となるアイデアを10個持つチームがアイデアを3つずつ組み合わせると、120個のあたらしいアイデアを生み出すことができます。一方、材料となるアイデアが100個あるチームは約16万件。1,000倍以上のあたらしいアイデアを手に入れることができるのです。乱暴な言い方をすれば、よいアイデアがほしいなら「下手な鉄砲も数撃てば当たる」が近道といえます。

したがって質は気にせず、まずはたくさんのアイデアを持つことが重要です。

4. アイデア創出のレシピ

ここまで、デザイン思考の「アイデア創出」について概要を紹介しました。デザイン思考は「前例のない仕事のためのレシピ」です。ここからは前回の「問題定義のレシピ」の続きとして、すぐに実践できる「アイデア創出」の進め方を具体的に説明します。

チームのチカラでたくさんのアイデアを生み出す

たくさんのアイデアを手に入れるために、デザイン思考では「チームのチカラ」を最大限に活用します。複数のメンバーが集まれば、異なる価値観や考え方、知識などによって「多様な視点」を持つことができます。各メンバーの視点を組み合わせることで相乗効果が生まれ、短時間でたくさんのアイデアを生み出せます。

具体的には「ブレインストーミング」(以下ブレスト)を活用します。3〜5人のチームを作り、「問題定義文」のユーザーが喜ぶような、デザインテーマに関するアイデアを考えます。前回までに紹介した「デザインテーマ」と「問題定義文」は以下の通りです。

前回紹介した「デザインテーマ」と「問題定義文」の例

前回紹介した「デザインテーマ」と「問題定義文」の例

ここで大切なのは「よいアイデアを出す」ことではなく「たくさんのアイデアを出す」ことです。
そのため、以下のようなブレストのルールを意識してください。これを実践すれば、誰でもたくさんのアイデアを生み出せます。

ブレインストーミングのルール

① 質より量 アイデアと呼べないようなものでもOK。
② 批判NG 批判するとアイデアが出なくなります。
③ 解説NG 解説はチームのアイデア出しの機会を奪います。
④ 突飛なものも歓迎 突飛なものや、一見無関係なものが突破口になることが多々あります。
⑤ 便乗・真似OK 少し変えれば別のアイデアです。チームで便乗・真似し合いましょう。
⑥ 口に出す 口に出すことで、それを聞いた他のメンバーが便乗しやすくなります。
⑦ ポジティブリアクション アイデアを出したこと自体を「いいね!」と評価しましょう。みんなでポジティブリアクションをすることで、アイデアを出すことが気持ちよくなる場を作りましょう。

ブレストをするメンバーを変えるのも有効です。「多様な視点」があればあるほど、いろいろなアイデアが生まれます。全く異なる環境で仕事をしている人に協力してもらい、ブレストをしてみましょう。全くあたらしいアイデアが、たくさん出てくるはずです。

コロナ禍では、チームで集まってブレストをすることは難しいかもしれません。しかし、Googleスプレットシートなどのオンラインツールを使えば、チームメンバー全員が一つのシートに書き込めます。

Googleスプレッドシートを活用したアイデアブレストのイメージ

Googleスプレッドシートを活用したアイデアブレストのイメージ

アイデアを「実現できるか?」「ビジネスになるか?」ではなく「役に立つか?」で選ぶ

ブレストを通じて大量のアイデアを生み出した後は、選定しましょう。大量のアイデアをすべて組み合わせるのは現実的ではないので、候補となるアイデアを選びます。ここで、アイデアの選び方の「悪い例」を紹介しておきましょう。

それは、ブレストで直感的に生み出した「ジャストアイデア」を「実現できるか?」「利益を生むか?」「自社でやるべきか?」といった、真っ当な評価基準で選んでしまうことです。このやり方で選ばれるアイデアは「誰も反対はしないがつまらなくて、すでにライバルがやっている」ものばかりになります。

例えば、「140文字しか投稿できないSNS」というアイデアがあったとします。そう、Twitterです。「利益を生むか?」「自社でやるべきか?」という観点では、まず却下されるでしょう。この観点は、イノベーションの芽を摘んでしまうのです。それが続くと「何を提案してもどうせ却下される」という雰囲気になり、誰も提案しなくなるという悪循環に陥ります。

では、どうすればよいのでしょうか?ジャストアイデアの段階では、アイデアの「可能性」を評価して選定しましょう。

最も重要なのは、「役に立つか?」です。デザイン思考のキーワードである「人間中心」とは、「実現できるか?」「ビジネスになるか?」は後回しにして、まずは「役に立つか?」を徹底的に考えるとお伝えしました。アイデアの選定も、この「人間中心」で行ってください。

「革新的か?」という評価軸もおすすめです。「役に立つか?」だけでは、すでに世の中にあるものばかりが選ばれてしまうリスクがあります。「革新的か?」を評価軸に入れると、これまでに見たことも聞いたこともないようなイノベーションの芽を見つけられる可能性が高まります。

アイデアを選ぶ際は、多様なメンバーによる「投票」がおすすめです。どのアイデアが「役に立つか?」「革新的か?」と考える基準は、人それぞれ。誰かが一票でも投票していれば、そのアイデアには可能性があるということです。多数決ではなく、投票されたアイデアはすべて採用しましょう。

アイデアが多過ぎる場合は、「役に立つか?」を優先してください。誰かの役に立たないと、そのアイデアは市場で価値を生み出せないからです。ただし「役に立たないけど革新的」なアイデアも、ある程度残しておきましょう。アイデアを組み合わせる際、そのようなアイデアが力を発揮します。

選んだアイデアを組み合わせる

アイデアを投票で選んだら、再びチームでブレストをしましょう。アイデアを組み合わせて、あたらしいアイデアを生み出します。ランダムに組み合わせるのも効果的で、普段ではなかなか浮かばないような斬新なアイデアが生まれやすくなります。

会社の戦略上、例えば「ブロックチェーン」といった特定の技術やスキルなどを使う必要がある場合、それを組み合わせの材料に入れてブレストをすると、斬新で役に立ち、かつ会社の戦略に沿ったアイデアを生み出すことができます。ここでも「質より量」を重視して、あらゆる組み合わせを試し、たくさんの「組み合わせアイデア」を生み出しましょう。

アイディア同士を組み合わせてあたらしいアイディアを創出

Googleスプレッドシートを活用したアイデアブレストのイメージ

たくさんの「組み合わせアイデア」が生まれたら、再度投票を行います。ここでも「役に立つか?」が最も重要ですが、さらに「(自分たちが)興味があるか?」「実現できるか?」で評価することをおすすめします。

自分たちが興味のないアイデアではモチベーションが上がらないため、高い確率で失敗します。また「実現できるか?」をこのタイミングで評価することで、荒唐無稽なものではなく「役に立つし実現もできる」アイデアを選ぶことができます。

逆に言えば、ここまでは一切「実現できるか?」は気にしなくてOKです。その方が自由な発想で「役に立つ」アイデアを考えられるからです。「役に立つ」アイデアを大量に生み出せば、その中から「実現できる」アイデアが必ず見つかります。

「役に立つし実現もできる」アイデアを選んだら、次の「プロトタイピング」に進みます。「プロトタイピング」については、次回詳しく解説します。

中澤雄一郎
中澤雄一郎

㈱Ringfish 代表取締役、新規事業コンサルタント、デザイン思考ファシリテーター
早稲田大学法学部卒。IMAGICAでの映像プロデューサー、ヤフーの事業統括責任者、損保ジャパンの新規事業開発リーダー、ベンチャー企業の最高経営責任者(CEO)を経て現職。既存業務と同じ感覚で新規事業に取り組み、失敗する事例を数多く経験し、デザイン思考などイノベーション手法の普及をビジョンとする。
通算100件以上のプロジェクト、30件以上のサービス、3件の事業創出、500万人が利用するサービスの事業責任者を経験。企画・プロデュースした事業は日経優秀製品・サービス賞「最優秀賞」、日本サービス大賞「優秀賞」など複数受賞。

BPO Prácticaでは、お困りの問題を解決するBPOコンテンツを多数展開しております。

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