1. ラインナップ拡大による業務量増加でBPOを導入
エプソン販売株式会社
子田 吉之様
——エプソンのスマートチャージは2014年にサービスを開始して、契約数が年々拡大しているサービスと伺っています。どのようなしくみのサービスなのでしょうか。
子田部長ビジネスインクジェットプリンターや複合機を、毎月定額で使っていただくサービスで、法人のお客様向けに展開しています。それまではプリンター本体を販売するビジネスが中心でしたが、法人のお客様へさらなる価値提案を行う新たなサービスとして2014年に市場に投入しました。
従来のプリンターは販売店を通じて販売していましたが、エプソンのスマートチャージはエンドユーザーと直接契約を結ぶ新たなビジネスモデルです。そこで、販売から契約まで業務を一括して扱おうと、東京都日野市の事業所にスマートチャージセンターを開設しました。
エプソンのスマートチャージ:https://www.epson.jp/products/bizprinter/smartcharge/
——BPOを導入したのは、どのような背景からでしょうか。
今井課長BPOを導入したのは2017年7月からです。それまでは社員と派遣スタッフで契約業務にあたっていましたが、取り扱う商品のパターンが増えるにつれて業務が複雑化し、業務量も急増していたのが背景の一つです。
もう一つの背景は、繁忙期と閑散期で業務量の差が激しいことです。最も契約が集中するのが3月で、通常月に比べると数倍の契約数があります。一番業務量が多い時期に人員を合わせると効率が悪くなります。フレキシブルに体制を構築していただけることを期待して、私どもからご相談しました。
小林部長当社は以前から札幌市でエプソン販売様の業務を受託していました。新たにスマートチャージセンターの業務についてお声がけいただいたことで、札幌市の事業所を非常時でも事業を継続できるBCPの拠点の一つにすることも含めてご提案しました。
2. 業務を切り出し繁閑差に応じた人員体制を構築
パーソルテンプスタッフ株式会社
小林 卓史
——BPO導入した当初、チームではどのように業務を進めていったのでしょうか。
小林部長業務の可視化は比較的早くできたと思います。ただ、業務量をどのように予測して、人員をどう配置していくかが課題でした。
日暮統括PLスタッフの教育も課題です。契約書の処理は非常に難しい業務で、機種やサービスなどのプランが増えるたびに、スタッフが業務を理解するためにはどうしても時間がかかります。
その中で繁閑差に対応するために取り組んだのが、短期間でも覚えることができる業務の切り出しです。繁忙期にスタッフを増やした際に、新たに入ってきたスタッフが一定の期間で取り組める業務を分けました。
また、1日の中で時間帯によって処理する業務は異なります。契約受付の書類は午前中に郵便で届くので、受付の業務に特化したパートスタッフが午前中から午後2時頃まで勤務する体制を作りました。また午後には、受付した書類をシステムに入力するスタッフが出勤します。全員がフルタイムで勤務するのではなく、必要な時間帯や時期にパートスタッフの人数を調整する方法で、繁閑差に対応できるようになりました。
——人員を増やすタイミングは、どのようにして判断しているのでしょうか。
日暮統括PL年度のはじめにエプソン販売様から契約件数の予測をいただいています。その予測をもとに見込みを立てて、ピークになる時期から2、3ヵ月ほど前倒ししてスタッフを増やし、その間を教育期間にして業務に慣れていただきます。
小林部長業務の難易度と時間を意識しながら、チームのフォーメーションを細やかにデザインしています。
3. 業務の急拡大にはシステム開発などの効率化で対応
エプソン販売株式会社
今井 祐美子様
——エプソンのスマートチャージはその後も契約件数が拡大しているそうですね。
今井課長BPOを導入した2017年に比べると、数倍の規模で拡大しています。特に2019年からは業務量が急増しました。その要因は大きく二つあります。一つはプリンターと複合機をフルモデルチェンジしたこと。もう一つは、基本的に契約期間が5年ですので、2014年のサービス開始からはじめ契約更新の時期を迎えたことです。
お客様にエプソンのスマートチャージを使い続けていただくために、契約更新の交渉は早めにアプローチを始めます。契約金満了前に契約更新するお客様もいれば、満了時に更新するお客様もいます。契約更新のパターンが複数生じ、複雑化した業務をどのようにして効率化していくのかを、BPOチームと一緒に考えながら進めました。この時期が一番の山場だったと思います。
——山場を乗り切るために、どのような取り組みをされたのでしょうか。
小林部長細やかなコミュニケーションを取らせていただいて、納期については優先順位をつけながら調整させていただきました。加えて大口案件を処理するシステムを急遽導入したことも大きかったと考えます。外部システムベンダーや当社の開発部門で設計し、構築することも可能だったのですが、このときには何よりスピードを優先し、エプソン販売様の内部で開発していただきました。イメージとしては1から10まで工程があったとして、同一処理ができる1から4までの工程を一括で処理するものです。
日暮統括PL日々の納期を順守するための進捗管理システムについては、エプソン販売様が使われていたMicrosoft Accessをベースにしたものを、私たちが管理・運用できるようにしていただきました。そのシステムをカスタマイズして、BPOチームのスタッフが自分で処理数を把握できる状態にしています。他にもデータを自動的に抽出できるシステムを導入するなど、作業時間の効率化を図っています。
今井課長進捗管理をシステム化したことで、処理件数を常に可視化できるようになりました。繁閑差に応じた体制を構築することに加えて、業務の構築も一緒に進めていただいています。これはBPOのメリットですね。
それに、毎月の報告書では定量的な内容に加えて、課題もレポートしていただいています。課題を的確に拾い上げていただくことで、私たちも業務を客観的に分析できます。報告書を見ながら次にするべきことをご相談できることも、BPOの良い点だと感じています。
小林部長システムのカスタマイズや作業の効率化は、当社のデジタルコンサルティング課のシステムエンジニアやプログラマーと一緒に進めています。外部のシステムベンダーに委託するよりは業務の運用に即したシステムを構築し、かつ、リーズナブルな価格でご提供できているのではないでしょうか。
4. ゴールを明確にして納期を確実に守る
パーソルテンプスタッフ株式会社
日暮 一恵
——業務が年々増えて複雑化している中で、納期を守ることは大変ではないでしょうか。
日暮統括PLエプソン販売様に迷惑をかけるだけでなく、その先のお客様にも影響が出ますので、納期はしっかり守らなければいけません。急に大きな契約が入ってきた場合はすぐに情報をいただいて、どのような対応ができるのかをご相談させていただいています。コミュニケーションをとらせていただきながら綿密な計画を作って、どうにか乗り切ってきた感じです。
今井課長特に繁忙期は、BPOチームの皆さんに違うスイッチが入っているような感じがします。ゴールを見せて、常に進捗を確認しながら進められていますよね。
日暮統括PLエプソンのスマートチャージの契約書の処理に関しては、その日に来たものはその日のうちに処理することを基本にしています。そこに大口の案件が入ったときには、この日までに何件まで終わらせるなどの目安を設定し、処理を進めています。
その際に実施しているのが、スタッフ全員の進捗状況の共有です。午後になると未入力、入力中、ダブルチェック待ち、ダブルチェック中の件数をボードに書き出して、それから1時間ごとに更新しスタッフが集まって状況を報告します。
全体の進捗状況はシステムで確認できるものの、他の人の状況を知ることで、全員が同じゴールに向かって進めるようになりました。納期の順守と定時で仕事を終えることを意識して取り組んでいます。
小林部長ゴールを示しながら業務を進めていることは、繁忙期を乗り切れている要因ですね。チームの力を引き出せている点で、人材サービス会社のBPOとして象徴的なケースだと考えています。
今井課長BPOチームの皆さんが、当社のビジネスや業務を深く理解していただいているからこそ対応できるのだと思います。私たちにとってどうするのがいいのかを常に考えてくださって、提案していただけるので、すごく信頼感がありますね。
5. 変化に対応できるBPOチームに
——エプソンのスマートチャージは今後どのような展開を考えられているのでしょうか。
子田部長今後も成長するサービスですので、将来的にはさらにラインナップも増やして、拡販していく予定です。エプソンのスマートチャージで提供しているビジネスインクジェットは、レーザープリンターに比べておよそ80%も消費電力を削減できる、環境に優しい技術です。当社は国内の製造業でいち早く生産工程でのフロンの使用を全廃した他、他社に先駆けて国内製造拠点の電力を再生可能エネルギー100%で賄うようになりましたが、このような環境負荷低減への取り組みは、今後あらゆる企業で急速に広がっていくと思います。
環境のことを考えれば、紙を使わない方がいいでしょう。ただ、紙にはコミュニケーションが取りやすいことや効率が良いといった利点があり、なくなることはありません。どうせ紙を使うのであれば、環境に優しいビジネスインクジェットを選んでいただき脱炭素に貢献できた方が、企業側にとってもメリットが高いと考えています。その意味でも、エプソンのスマートチャージをますます広げていきたいですね。
小林部長エプソン販売様の事業戦略に沿うためにも、これからは変化に対して柔軟性を持ったBPOを追求することが大切だと感じています。エプソン販売様の立場でエンドユーザーのお客様のことを常に考えれば、業務の柔軟性は高まります。変化に対応して生産を上げることで、1件あたりの処理コストを下げて、利益に貢献できるようなパートナーを目指していきたいですね。
子田部長契約業務は複雑で、コピー業界独特の商習慣などもあり、全く人手に頼らない状況にはならないと思います。BPOチームの皆さんに業務をお願いすることと、私たちがシステムを改善して効率化することはセットです。この両輪で効率化を進めることによって、お互いの幸せにつながるのではないでしょうか。これからもご協力をいただきながら、一緒に乗り越えていければと思っています。