神戸市がBPOで実現した特別定額給付金のスピード給付

神戸市がBPOで実現した特別定額給付金のスピード給付

行政手続き・事務
公開日:2020年10月13日
5つのポイント
  1. 神戸市は大都市の中で、最も早く特別定額給付金の振り込みを実現
  2. 市民へのスピーディな給付を目指す上で、給付事業にBPOを導入
  3. BPOは「公民連携」の実績があるパーソルテンプスタッフ(PTS)に委託
  4. スタッフの柔軟な運用と、PTSのノウハウを活用して1日最大25万通の申請書に対応
  5. コールセンターとの連携、KCS(ナレッジセンターサービス)の手法を取り入れたFAQなどで大量の問い合わせに対応
はじめに

新型コロナウイルス感染症の緊急経済対策として、1人につき10万円が支給された特別定額給付金。いち早く住民に届けようと、どの自治体も特別な体制をつくって、試行錯誤をしながら対応したと思います。

全国の自治体の中で、人口150万人を擁しながら、スピード給付を実現したことで注目されているのが神戸市です。

4月20日に特別定額給付金が閣議決定されると、神戸市はそのわずか3日後にコールセンターを立ち上げ。5月18日にはオンライン申請分、同月28日には郵送での申請分の給付を開始しました。給付率は5月末に約80%、7月8日には99%となり、ほぼ振り込みを完了。人口100万人以上の大都市の中では圧倒的に早いスピードです。

市民への迅速な給付を目指して、神戸市が導入したのがBPOでした。給付業務をパーソルテンプスタッフ(以下、PTS)が受託し、パーソルワークスデザイン(以下、PWD)とともに2ヶ所でコールセンターを運営。神戸市と2社の連携によって、スピード給付が実現したといいます。

今回は神戸市の特別定額給付金チームに所属する福祉局政策課の箱丸智史担当係長、パーソルテンプスタッフ西日本OS事業本部の藤原理絵本部長と上西邦彦課長、パーソルワークスデザイン第二事業部公共ソリューション部の黒木桜子課長の4名に、スピード給付が実現できた要因をお聞きしました。

1. 長年「公民連携」の実績があるPTSに委託

長年「公民連携」の実績があるPTSに委託

——神戸市が特別定額給付金事業にBPOを導入したのは、どのような経緯だったのでしょうか。

箱丸担当係長特別定額給付金は市民が待ち望んでいるものですから、神戸市としては6月中には90%の世帯に給付する目標を掲げました。しかし、事業規模が大きく、市の内部で体制を考えるような時間もありませんでした。

そこで、できるだけノウハウを持った信頼できる事業者さんにお願いできればと思い、以前から市の業務の一部を担っているPTSさんにこちらからお声がけして、地方自治法施行令の規定により任意に選んだ事業者と契約できる随意契約で委託させていただきました。

——PTSでは、これまで神戸市のどのような事業を担当してきたのでしょうか。

PTS藤原本部長リーマンショックの翌年の2009年に実施された、定額給付金事業を担当させていただいたのが最初です。その後、臨時福祉給付金事業やマイナンバー制度が導入される時の事務も受けさせていただきました。

現在も、神戸市さんの様々な申請の処理やお問い合わせを一括して対応する、行政事務センターの事業を担当しています。

PWD黒木課長行政事務センターなどに寄せられる電話でのお問い合わせは、私が所属するPWDの宮崎第1アウトソーシングセンターで対応しています。今回の特別定額給付金でも、最初の窓口となる1次コールセンターをここ宮崎市に開設しました。

箱丸担当係長神戸市は数年前から公民連携で事業を推進していることもあり、民間の力を積極的に取り入れています。行政事務センターもその一環です。

——公民連携を始めたのは、どのような理由からでしょうか。

箱丸担当係長1995年の阪神・淡路大震災以降、神戸市では行財政改革の一貫で職員数を減らしてきました。その頃から民間委託を進めていますので、民間の力を積極的に活用する雰囲気が醸成されています。

ただ、私たち職員は定期的に異動があるため、市の内部にはノウハウが蓄積されていません。その代わりに、公民連携を進めてきたとこで、民間事業者がさまざまなノウハウを持っています。給付金のノウハウはPTSさんが持っていましたので、早く給付するためにはPTSさんにお願いするのがベストだと判断しました。

2. 業務の設計やスタッフの運用を見直しながらスピード給付を実現

業務の設計やスタッフの運用を見直しながらスピード給付を実現

——神戸市の給付率は5月末時点で約80%、7月6日には99%となり、この時点でほぼ振り込みが完了しました。人口150万人を抱える大都市であるにもかかわらず、スピード給付を実現したことは全国で話題になっています。事業を受託したPTSとPWDは、どのような体制で臨んだのでしょうか。

PTS藤原本部長神戸市内に給付事務局を置いて、給付業務では最も多い時期で1日あたり250人の体制を組みました。神戸市さんから5月中に給付を始めたいという意向を聞いていましたので、プレッシャーを感じていましたね(笑)。それ以外に2次コールセンターにも人員を配置しています。

PWD黒木課長1次コールセンターは電話を平日で50回線、多い時には55回線用意しました。人員はスーパーバイザーを含めて約80人です。この体制で土日も含めて毎日対応しました。

ピーク時の作業量

——まずは、給付事務局でどのように業務が進められたのかについてお尋ねしたいと思います。ピーク時の作業量は、どれくらいだったのでしょうか。

PTS藤原本部長郵送での申請が始まった最初の頃、申請書が1日に25万通届いた日がありました。

——1日に25万通ですか。

箱丸担当係長その日に届いた申請書は、2トントラック3台分です。あの25万通を見た時は、これは大変だなと思いました。

パーソルテンプスタッフとパーソルワークスデザインの協業体制
特定給付付事務

※神戸市人口統計参考

——どのようにして乗り切ったのですか。

PTS藤原本部長昼間は約200人のスタッフが事務局にいましたが、25万通の申請書を開封するには、とても間に合わない体制でした。そこで、夜間にも50人ほどの体制をつくって、夜間のスタッフにはとにかく開封作業だけに専念していただきました。

——250人ものスタッフでの業務は、スムーズに進んだのでしょうか。

PTS藤原本部長神戸市さんは6月中に9割の給付を目指していましたので、どうすれば実現できるのか、常に試行錯誤していました。スピードが求められた入力業務は、スタッフ1人ひとりのスキルを確認しながら、途中からデータ入力の経験があるスタッフ中心に入れ替えました。

入力以外の業務についても、箱丸さんにもご相談させていただきながら、運用を随時変えていました。こうした柔軟な対応ができたのも、スピード給付を実現できた要因かもしれません。

——準備段階で考えていた運用とは随分違ったということでしょうか。

PTS藤原本部長これまでの経験だけでは対応できない部分がたくさんありました。 民間の事業も含め、PTSが担当してきたプロジェクトの進め方を社内で聞きながら、よりふさわしい運用方法を模索しましたね。

箱丸担当係長PTSさんがバックボーンとして社内に様々なノウハウを持っていることが大きかったですね。職員だけでやろうとしても無理だったと思います。

PTS藤原本部長あと、業務を始めた段階で苦労したのは、パソコンの調達です。最初は70台あまりの予定だったのですが、早い給付を目指すということで200台必要になりました。リース会社からは「これ以上は無理です」と断られながらも、何とか調達できました。

PTS上西課長パソコンの調達も含めた事前の準備も、やはりスケジュールがタイトでしたので、限られた時間の中で優先順位をつけて進めました。初期の段階では行政特有のプロセスや専門知識を習得することにも注力しました。

3. 1次コールセンターで問い合わせの82%を解決

——続いて、宮崎市に拠点を置いたPWDの1次コールセンターの状況についてもお尋ねします。最も多い日で、どれくらいの件数の問い合わせがありましたか。

PWD黒木課長最大で5万件の問い合わせが入ってきました。それだけ多くの問い合わせが1日に入ると、さすがにすべての電話に対応できません。それでもできるだけ対応しようと、オペレーターは会話が終わって電話を切ると、すぐに次の着信を受けて、ずっと話し続けている状態でした。

——コールセンターは2か所でどのように連携していたのでしょうか。

PWD黒木課長1次コールセンターでは個人情報を取り扱いませんでした。個人情報に関わるお問い合わせや、解決できないものは、神戸市内にあるPTSの2次コールセンターに対応をお願いしました。

お問い合わせをどれだけ解決できたかについては、時期によって異なりますが、6月は1次コールセンターで82%を解決しています。残りの18%は解決できなかったというよりも、2次コールセンターにお問い合わせ窓口を置いていた審査などについての問い合わせが多かったですね。

PTS藤原本部長2次コールセンターでは98%を解決して、残りの2%を神戸市さんにお願いしました。もちろん電話だけでは対応できませんので、申請の状況を自分で確認できるサイトを神戸市さんに立ち上げていただきました。

箱丸担当係長サイトが立ち上がったのは、6月上旬です。6月10日には1日で25万件のアクセスがありました。申請者となる世帯主が76万人なのに、すごい件数ですよね。今年は中止になりましたが、例年開催している花火大会当日に殺到する「雨が降っていますけどきょうはどうなるのですか」という問い合わせよりも多かったです(笑)。

PWD黒木課長コールセンターでも、営業が終了する午後5時30分以降にお問い合わせいただいた方のために、質問に自動で応答するチャットボットを用意しました。

PTS藤原本部長神戸市さんがつくったサイトと、チャットボットで、問い合わせ件数を抑える効果はあったと思います。

4. 成功の背景にある運用品質のノウハウ

成功の背景にある運用品質のノウハウ

——最初に膨大な申請や問い合わせがある中で、スムーズに業務を進めることができた要因をどのように考えていますか。

箱丸担当係長PTSさんから最初に「市の職員しかできない仕事なのか、職員ではなくてもできる仕事なのか、きちっと線引きをして進めましょう」と言っていただいたことが大きな要因ですね。

役所は難しい判断が必要な業務から、開封作業といった単純作業まで、何でも丸抱えしがちです。それを少し整理するだけで、お任せできる仕事が実はかなりあったとわかったのが、今回気づいたことです。PTSさんも、PWDさんもノウハウを持っていますので、こうすればもっと効率がよくなるというご提案もいただきました。

PTS藤原本部長給付に向けて動き始めた頃は、総務省の通達内容が日々変わりなかなか前に進まない場面もありました。その時に神戸市さんから「この点は絶対守ってください」と指南していただいたので、その中で変えていくことができました。

また、当初想定していた申請書の到着件数が前倒しで到着したこと、住民の方の問い合わせの受電数が1日4万件以上超過した際、「1日でも早く給付を行うこと」「市民の方の問い合わせを確実におこなうこと」を目的に、箱丸さんを始め担当部署の方々と度重なる打ち合わせや市の他部署を巻き込み、運用手順の変更や申請書サイトの導入の実施をしました。

それぞれの工程において業務工数を算出し、日々チーム編成を変更することによる生産性を上げる運用や、システム担当と仕様変更の議論を重ね臨機応変な対応をしてきたことが要因だと思います。

PTS上西課長言葉を選ばずに言うと、神戸市さんは丸投げではなく、このように進めたいと方向性を示していました。その方向で私たちが最大限できることはなんだろうと、対応を考えやすかったですね。

——今回、特に活用できたノウハウは、どんなものでしょうか。

PTS藤原本部長一つ目は、官民多数のプロジェクト運用を行う中で、トータルソリューションのノウハウを保有していたことです。今回の給付において、わずか3週間で、拠点開設、ファシリティ配置の設計・準備、インフラ構築、パソコン調達、申請書のデザインおよび印刷、業務デザインによる運用体制、人選、システム開発、コールセンター開設をする必要がありました。

不備率を減少するための申請書のデザイン、処理速度を上げるためのパソコンなどの種類の選択、ミスを減らすためのファシリティ導線、市担当者の方やコールセンターと事務センターの担当者が情報連携を可能にするためのシステム開発、処理に応じたスキルを要した人員配置など、具体的なノウハウを持っていたことです。
二つ目は、大量の処理業務を行うための運用ナレッジを保有していたことです。
弊社は官民ともに、大規模の事務センターを運用しています。業務のコントロール方法、工程ごとのチームコントロール手法など組織としてナレッジを保有しており、そのナレッジを活用する手法をもっていました。

PWD黒木課長弊社ではコールセンターをはじめとするコンタクトセンターの運営に、KCS(ナレッジセンターサービス)という手法を取り入れています。これはオペレーターが知らない、もしくは経験がないナレッジや、最新の情報を常に共有して、属人化しない応対を実現する手法です。

KCS(ナレッジセンターサービス)
米国の非営利団体「サービスイノベーションコンソーシアム」が提唱する、コンタクトセンターの運営手法で、ナレッジを中心としたサポートのこと。

具体的には、電話を受けたオペレーターは質問内容を把握すると、質問と回答を集めたFAQを検索。出てきた内容を常に確認しながら、サポートすることが義務付けられています。充実したFAQによって、1次コールセンターで多くのお問い合わせが解決できました。

また管理者側では、神戸市さんやPTSからいただいた情報をすぐに更新しますので、オペレーターは最新の情報を市民に提供できます。対応の改善もその都度入力します。単に早く回答するだけでなく、「こうすればできますよ」といった実例を盛り込むことで、市民の方の納得度が増し、より深みのある案内ができているのではないでしょうか。

箱丸担当係長PTSさんとPWDさんに業務に対してお願いをすると1時間後にはもう変更していたほか、体制変更が必要なときでも半日や1日で完了していました。安心してお任せできましたね。短期間ではありましたが、密に連携させていただいて、とても濃い業務が一緒にできたと思っています。

取材協力 神戸市
取材協力
神戸市
Kobe City
https://www.city.kobe.lg.jp/
神戸市 福祉局政策課 担当係長 箱丸智史 様
神戸市
福祉局政策課 担当係長
箱丸智史 様
パーソルテンプスタッフ株式会社 西日本OS事業本部 本部長 藤原理絵
パーソルテンプスタッフ株式会社
西日本OS事業本部 本部長
藤原理絵
パーソルテンプスタッフ株式会社 西日本OS事業本部 西日本第二BPOサービス部 西日本BPO運用三課 課長 上西邦彦
パーソルテンプスタッフ株式会社
西日本OS事業本部
西日本第二BPOサービス部 西日本BPO運用三課 課長
上西邦彦
パーソルワークスデザイン株式会社 第二事業本部公共ソリューション部二課 課長 黒木桜子
パーソルワークスデザイン株式会社
第二事業本部公共ソリューション部二課 課長
黒木桜子

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