1. BPO活用による業務の一元管理、「センター化」の実現
——法人ビジネス本部ではどのような業務にBPOを導入しているのでしょうか。
吉田氏PTSさんにお願いしているのは、総括業務全般と会計事務、検証用携帯電話などの端末管理の3つです。
総括業務センターは消耗品管理などの庶務業務から社員の福利厚生業務、人事異動時の物品準備など幅が広く、雑多な業務を一括してお願いしています。会計事務センターは請求書発行や入出金のチェック業務など会計に関する事務業務、端末管理センターは検証用端末の貸し出しや、社員の業務用携帯電話管理などで今年4月からお願いしています。
——法人ビジネス戦略部の業務は、範囲が広いようですね。
吉田氏法人ビジネス本部全体の総括を担当していますので、業務は多岐にわたります。社員がお客さまのような感じで、社員の皆さんが働きやすい職場を作っていく部署です。私自身は福利厚生や労務全般を担当しています。
中嶋氏私は法人ビジネス本部の総務、人事、労務の統括業務を担当しています。また本部以外でも、全国の法人のお客さまとの会議運営から、最近ではオフィスに検温センサーを導入するなどの新型コロナウイルス対策や、テレワークの推進の対応にもあたっています。
吉田氏先日、NTTの完全子会社化の発表でも、法人のお客さまに信頼される企業になるという話が出ました。厳しい市場環境の中で、携帯電話を提供するだけではなく、通信を活用したさまざまなソリューションを提供することをこれまで以上に進めて事業を拡大していくことを、3ヵ年の中期戦略に盛り込んでいます。
事業拡大の柱の一つが、スマートフォンで勤怠管理ができるシステムや、テレワークに使えるような商材を提案するといった法人様向けの事業です。もう一つは他の部署が担当ですが、動画や音楽のコンテンツ提供や金融系の決済など、個人の生活に寄り添ったサービスを展開するスマートライフ領域の事業です。
PTSさんにはもともと他部門(スマートライフ本部)で端末管理をお任せしており、業務効率化の実績より紹介を受けて、法人ビジネス本部でもお願いしたという経緯です。
2. スタッフ3名から始めて20名超へ。業務効率化の範囲が拡大
——早川さんはBPOの立ち上げのときからかかわっているそうですね。
早川PM2014年にプロジェクトを立ち上げるときに、プロジェクトリーダーとして着任しました。最初は3名体制で総括業務を中心に受託を始め、その後、会計業務、端末管理業務と段階的にご相談をいただき、規模が拡大している状況です。
——現在はどれくらいスタッフの方がいるのでしょうか。
早川PM総括チームと会計チームで各4名、端末チームは8名で運用しています。スタッフ増員も決定しており、各チームにリーダーが1名ずつおりますので、規模としては20名を超えています。
——導入した当初は、法人ビジネス本部ではどのような課題を抱えていたのでしょうか。
早川PM当時は法人ビジネス本部の中の5部門(現:7部門)それぞれの総括担当者が同様の業務を部門ごとのやり方で実施していました。そこで、総括業務を集約して効率化できないか?とご相談をいただきました。
吉田氏社員に対するサービスにかかわる事務処理は、かなり膨大にあります。別々に処理するよりも、合わせて行った方が効率的で質も担保できると考えて相談しました。
中嶋氏総括業務では人事異動時のパソコンや業務用携帯電話の貸出や各備品準備、また福利厚生関連の提出書類管理なども発生し、BPOチームの皆さんに一手に引き受けていただいています。本部全体の文房具や消耗品などの補充や在庫管理もお願いしていますね。
——総括業務から会計、端末管理と複数の業務にBPOを導入することで、どのようなメリットがありますか。
吉田氏法人ビジネス本部は当初5部門でしたが、現在は7部門あります。法人事業に力を入れていることもあって、部署も人材も増えているんですね。各部門の業務を紐解いていただくことで、業務効率化が図れることは我々にとって大きなメリットです。
中嶋氏3つのチームで繁忙期がそれぞれ違うので、繁忙期で人員が必要なときに他のチームからフォローしてもらえるのも助かっています。人事異動のときには数百人の方が法人ビジネス本部に新たに着任しますので、この時期には特に工数を割いていただいています。
早川PMドコモ様の中で業務遂行しながら他の業務へ受託範囲を広げることは、実際の業務ノウハウや改善手法、人材などが活用できるので、迅速で確実な運用方法のご提案ができることも私たちの強みだと思います。
3. 検証用の携帯電話端末や回線を数万台管理
——携帯電話端末の管理は今年4月から始まったということですが、具体的にはどのような端末を管理しているのでしょうか。
中嶋氏用途は2つあります。社員に貸与している業務用と、お客さま向けのサービスを検証するための検証用のものですね。
——実際にプロジェクトを担当している河内さんにお尋ねしますが、約半年間実施してみて想定外だったことなどはありますか。
河内PM法人ビジネス本部は大きな組織なので、実際には想定以上に端末や回線の数が多かったことですね。システム上のデータと各物品との現況調査(棚卸)を通して、どのようにしたら管理品質を維持できるのか、悩みながら進めてきました。
河内PM業務用は2,500台くらいです。検証用の貸出端末はかなり多くて、端末が1万台あったとして、回線数はその倍になることもありますので、端末と回線をあわせて数万件になります。
中嶋氏貸出端末はテスト機やデモ機、営業用に使用するための端末など、さまざまな過程に応じてあります。端末だけでも7,000台から8,000台くらいありあたらしい機種の発売のサイクルも早く、短期間で検証を行う必要があるため、管理などは特に大変です。
河内PMスマートライフ本部で端末管理をお任せいただいていたので、そのときに得たノウハウを法人ビジネス本部の運用へアレンジして組み替えました。中嶋さんは営業部門でのご経験がおありなので、営業担当者の目線でのアドバイスをいただき、本部内でも情報収集をしながら、課題解決に取り組んでいます。
——効率的に管理するために導入しているものはありますか。
中嶋氏端末管理では一部に外部のサービスを利用しています。社内のシステムとは連携せず、独立した端末管理システムとして使っていますね。人ではなく機械に任せて効率化できるものは今後増やしていきたいと思っています。PTSさんにはRPAも導入してもらっています。
河内PM会計事務センターでの導入になりますが、入金業務で発生するデータ処理です。以前は手作業で月末と月初に4名がかりで残業しなければ終わりませんでしたが、RPA導入により10時間ほどで2,000件以上を捌けるようになりました。一番効率化できているのはこのデータ処理ではないでしょうか。
吉田氏RPAはNTTデータが作っているWinActorです。WinActorは市場の中でも結構取り入れられています。うまく使いこなせたらこれほど楽なことはないと思いますね。
河内PMその他にも端末管理では業務用端末の貸出が円滑にできるように、PTS内のデジタルコンサルティング課と連携し、独自のシステムを現在開発しているところです。
4. 社員とBPOチームの連携で新たな付加価値が生まれる
——BPOチームと日頃どのように連携をすすめているのでしょうか。
中嶋氏月に1回、各チームの業務報告会を実施いただいています。突発的なハプニングが起きたときはその場で相談しますが、長期的な課題や運用のルールを変更するといったことを検討するのは業務報告会の場です。
早川PM前月の稼働時間や業務処理・依頼件数などをレポートにしてご報告すると共に、その他ご提案やご相談事項を毎回アジェンダに盛り込んでいます。
——運用のルールを決めるときには、どのようなことから着手されるのですか。
早川PM業務フローがあらかじめ分かっている場合には、現状の作業手順・イレギュラーの有無などのヒアリングから始めて、その上で一番効率的だと考えられる運用方法をご提案していきます。法人ビジネス本部様でもこの作業の繰り返しでしたが、そういったやりとりの過程でBPO運用についてご理解をいただき、関係性を築きながら進めていくことができたのではないかと思っています。
吉田氏コミュニケーションをとりながら、円滑に進めていただいています。PTSさんがこれまで培ってこられたノウハウにより、私たちが望むクオリティ以上のものをアウトプットしていただいています。そのまま進めて行きたいですし、管理していただく範囲を今後も拡大したいと考えています。
——BPOの範囲を広げることにより、業務がブラックボックス化する懸念はないのでしょうか。
吉田氏PTSの皆さんは仲間という感覚をもっていますので、ブラックボックス化する懸念は持っていないですね。
中嶋氏業務の範囲を広げていく過程では、業務を1から10まで知った上で次の新たなルールや運用を検討しています。分からないことや、これまでの業務にないことが生じても、すぐに解決するためのやりとりを日々していますので、ブラックボックス化はされていないと思います。
吉田氏確かに統括業務や会計業務には職人気質の人もいて、業務が属人的になり、その人がいなくなると分からないということが以前はありました。しかし、属人化のようなことは、むしろなくなった方がいいと考えています。誰が業務を行っても一定のクオリティを保つことができた方がいいですよね。私たちが固執していた方法とは別の観点で業務をとらえて、ノウハウを活用することで、PTSさんの進め方がよかったと気付くこともよくあります。
企業に求められるものは、コンプライアンスや情報管理、働き方改革など年々増えています。統括業務でも情報管理や社員研修などを取りまとめるだけでもかなりの業務量があるので、こうした業務をお願いすることにより、従来必要なところに力を入れることができています。裏を返せば、お願いしていなければ首が回っていなかったですね(笑)。
そういう意味では、自分が持っているものを手放すことは、決して悪いことではありません。お任せすることにより、我々の仕事に新たな付加価値が生まれることを日々感じています。
中嶋氏今後も更にコスト削減や業務効率化ができると考えていますし、その分自分たちの業務に集中することで、結果として売り上げアップにもつながると思っています。
早川PM社員の皆さまは本当に多くの仕事を抱えていらっしゃいます。業務効率化を進めながら、本部内で集約ができそうな業務のご提案や改善を今後も続けていきたいと思っています。昨年は5Gサービス開始関連での期間限定プロジェクトを立上げましたが、これからもご要望に柔軟にお応えしていきたいですね。
河内PMNTTドコモ様全体で展開して、PTSへの委託規模は総勢100名を超えるまでになっていますので、信頼して大切な業務を任せていただけるチーム運営をこれからも続けていきたいです!