1. 共架事業は5G中間基地局や防犯カメラなどの需要が急増
東電タウンプランニング株式会社
田島 洋史様(右)
——電柱の共架事業をどのようなエリアで展開しているのでしょうか。
三角さん当社は東京電力グループの企業として、電柱の地中化と地域開発事業、配電事業、広告事業を展開しています。共架事業は配電事業の一つです。エリアは東京電力管内1都8県で、静岡県に関しては富士川の東側の地域が対象です。
電柱を利用したいという申し込みを事業者さまから受け付けまして、設備を取り付けることができるかどうかを審査し、電柱への設置工事が申請通りに実施されたかどうかを確認します。この確認作業を竣工検分と言います。この業務をBPOでお願いしています。
共架業務プロセスの全体図
——共架事業については、事業者からの申し込みは増えているのでしょうか。
岡田さん電柱の空いた部分の貸し出しをはじめたのは、1985年から段階的に始まった通信の自由化からです。それまでは電力線以外には国営の日本電信電話公社、現在のNTTの通信線だけしか張ることができませんでしたが、通信事業に民間事業者が参入できるようになり、電柱も有効活用されるようになりました。利用は年々増えて、最近では5Gの中間基地局の需要が高まっている他、自治会などから防犯カメラ設置の申請も増えています。
田島さん一方で電力の小売自由化も進んでいまして、東京電力グループ全体で業務の効率化が求められています。共架事業は東京電力の支社がエリアごとにスタッフを配置して業務に取り組んでいましたが、業務を一箇所に集約して効率化を図ることになりました。それで2018年8月に開設したのが、共架オペレーションセンターです。
東電タウンプランニング株式会社
三角 二郎様(左)
2. スタッフ確保や育成等マネジメント工数に課題があり、派遣からBPOへの移行を提案
——BPO導入前にはどのような課題があったのでしょうか。
三角さんセンターを開設した2018年8月に埼玉、群馬、栃木の共架業務の集約化からはじめて、12月までに他のエリアも集約化しました。当時のスタッフはパーソルテンプスタッフさんに派遣社員の方を中心にお願いしていました。さいたま市にセンターを開設しましたので、それまで埼玉県内の共架業務を担当していた11人のスタッフの方に引き続き勤務していただき、その他のスタッフの方は新規で9月から就業いただきました。
カバーするエリアが広がるたびに業務量が増えますので、そのたびに人員を増やし、社員を含めたスタッフの人数は2019年4月までに100人程まで急増しました。
岡田さん急激に人が増えましたので、スタッフの育成は大変でした。時間をかけて育成しても辞める方もいらっしゃいますので、業務に必要な人数を確保するのは容易ではありません。それ以外にも、1都8県の業務を集約した時に、それぞれのエリアにローカルルールが存在したことも大きな問題でした。申し込みの書式は決まっているのですが、エリアによっては省略する部分や必要な書類の数が違っていたので、センターができてしばらくの間は混乱していました。
——その状態から、どのようなきっかけでBPOを導入されたのでしょうか。
田島さん各エリアの業務を集約化したものの、業務の可視化ができていませんでしたので、外部に委託した方がいいかもしれないと考えました。ちょうどそのタイミングで、チーム派遣(※)をお願いしていたパーソルテンプスタッフの新井さんからBPOのご提案を受けたことがきっかけです。
※チーム派遣とBPOの違い:同じ派遣会社に所属する複数名の派遣スタッフを1つのチームとして派遣する契約形態で、派遣スタッフを束ねるリーダーをチームに配置し、そのリーダーがスタッフへの業務指示を担います。業務指示をチームリーダーに一任し運営するのがチーム派遣ですが、スタッフ一人ひとりの雇用管理・労務管理は、派遣先企業となります。
BPOは業務の効率化や可視化、また労務管理・人員調整・スタッフ育成等のマネジメント工数の削減を行えるのが特徴・強みであり、BPOを活用することで、業務全体の改善を図ることができます。
新井さんセンターが立ち上がった当初から、委託化の検討はされていたと認識しています。確かに現場も混乱して、派遣スタッフの方々にも戸惑いがありましたので、まずはBPOを導入するかどうかを検討するために、事前調査をご提案させていただきました。
川口さん事前調査では業務内容を詳しく調べました。その結果、竣工検分をBPO化することで、共架業務の効率化を図れる可能性が見えてきました。業務フローの作成や業務の可視化を進め、工数から業務ごとに必要な人数を算出して、BPOをご提案いたしました。
パーソルテンプスタッフ株式会社
川口 千絵子(左)
——派遣のスタッフの皆さんには、どのような戸惑いがあったのでしょうか。
新井さん共架の申し込みにもいろいろなケースがあるのですが、その際の判断基準が分かりづらかったことですね。社員の方に確認しなければ判断できないことが多く、どこかで線引きが必要だと感じていました。
岡田さんセンターの発足当時は私も含めて社員が3人いました。派遣のスタッフの方が疑問に思ったことや判断できないことを社員の誰かが判断していましたが、担当者によって回答が違っていたと思います。判断基準が曖昧でした。
新井さん私どもも派遣スタッフの方からヒアリングした上で、業務が抱える課題や改善が必要な点などを会議で報告させていただいていました。その過程で、人員の確保と業務の効率化を進めるにはBPOの方が適しているのではないかと感じました。
——最終的に竣工検分のBPOを決めたのは、どのような点がポイントになったのでしょうか。
田島さんもともとパーソルテンプスタッフさんに派遣サービスをお願いしていて、その業務の品質自体に大変満足していました。事前調査の結果を見て、業務の中で抱えていた課題を解決するには、ご提案いただいた通り、BPOもパーソルテンプスタッフさんにお願いした方がいいと考えました。社員に相談するエスカレーションの内容を集計できるフォームなどの作成もご提案いただいて、これなら全員が同じルールで業務を進めることができるのではないかと思い、2020年6月からBPOをお願いしました。
3. 膨大な業務量になっても納期を順守
東電タウンプランニング株式会社
岡田 圭司様(左)
——BPOに移行して、業務にはどのような変化が表れましたか。
三角さん業務全体の可視化ができたことで、以前に比べると業務の進捗状況がかなり可視化されました。スタッフの方が判断に困るケースが新たに出てきた場合は、月1回の報告会で報告していただいて、改善できる点があればすぐに取り組むようにしています。課題への気づきも、それに対するアプローチも早くなったと思います。
岡田さんBPO化の前は納期を決めていたものの、業務量が多く、しかも煩雑だったので、どちらかというと努力目標のようなものでした。それが今ではWEBで申し込みがあったものは5営業日以内、紙での申し込みは11営業日以内に処理していただくルールで必ず納期を順守していただいています。クライアントへの対応納期が安定し、かつ、常に順守可能な状態になったことは一番の成果ですね。
三角さん通常の納期を守っていただいているだけではなく、業務が増えた場合でも迅速に対応していただいています。お客さまからの申し込みは季節によって増えることがありますし、規模の大きな事業者さまから一度に大量の竣工申し込みが紙で届く場合もあります。このように、通常の納期では処理しきれないような業務量が一時的に集中した場合には、例外的に期限を21営業日以内と延ばして設定することで、お客さまへの影響を最小限に抑えていただいています。こういった調整も、報告会を通じてできたことですね。
——スタッフが大量の申し込みを処理できるように、何か新たな工夫をされたのでしょうか。
川口さん業務を可視化して、ルールを統一化したことで、スタッフの習熟度が上がったことが大きいと思います。エスカレーションの対応を記録して共有することで、岡田さんや社員の方に質問する機会も減り、できるだけチーム内で完結できるようになりました。
橋本さん膨大な業務量をどうすれば早く処理できるかについては試行錯誤しました。その結果、現在はエスカレーションをするスタッフと、処理業務をするスタッフを分けて役割分担しています。エスカレーションの担当者を決めることで、それ以外のスタッフが業務に集中できるようになり、効率がよくなったと思います。
納期の管理は、進捗を日次で集計してチェックしています。業務量が増えたからといってスタッフに急に残業をお願いすると、心理的な負担にもなりますので、この件数になったら残業の依頼をしますとホワイトボードに書いて、その数字を毎日更新しています。そうすることでスタッフは心の準備ができます。
——ほかにもBPOならではのメリットを感じている部分はありますか。
田島さん導入して1年4か月くらい経ちました。社員の負担は確実に軽減されていますね。当初は社員が3人で担当していましたが、今は1人です。以前は細かいことでの対応に追われていましたが、業務に関してはお任せできるようになって、基本的に全体の管理だけをする状態になりました。
岡田さん以前は社員が日々の業務を指示していましたが、現在はBPOチームのリーダーが業務指示を行ってくれますので、大変助かっています。判断基準やルールを橋本さんが書面に起こし可視化していますので、あたらしいスタッフの方が入っても判断がぶれなくなっています。そういうしくみをつくっていただいているのもありがたいですね。
それと、スタッフの育成もしていただけるのは大きいですね。もちろん私どもも研修など協力はしますが、以前のような苦労はなくなりました。スタッフの労務管理にかかる負担もかなり軽減され、企画業務などに注力できています。
パーソルテンプスタッフ株式会社
橋本 和枝(右)
4. BPOであれば今後の変化にも対応できる
——BPOの活用については、今後はどのように考えていますか。
田島さん業界を取り巻く状況や、情勢の変化はこれからも続くと思います。その際に困難な点が生じて、新たなお願いをすることも考えられます。パーソルテンプスタッフの皆さんにはずっと業務をお願いしてきて、業界のことや当社のことも熟知していただいていますので、ぜひお力を借りながら、今後の変化に対応していきたいですね。
三角さん派遣社員として働いていた方が、BPOでも中心的なスタッフとして働いていることで業務の安定化につながっています。そういう意味では、業務の継続性があることが発展の基盤になっていると思いますし、経験のあるスタッフの力が今後も重要になってくると思っています。
新井さん派遣スタッフは現在の法律では3年間しか同じ職場で働くことができませんので、私たちにとっても優秀な人材が働けなくなるという課題がありました。派遣からBPOに移行することで、スタッフの方の能力を引き続き生かすことができますので、スタッフの方の希望も聞きながら今後も調整を進めていきたいと思います。
——パーソルテンプスタッフとして、今後について何か検討していることはありますか。
川口さん今後もご要望があれば、業務の可視化や工数調査等を通じて、BPOにより効率化できる対象業務の拡大をご提案させていただきたいと考えています。その際には、一方のチームが繁忙期になったらもう一方のチームからスタッフを借りてお手伝いいただくといったBPOチームの新たな体制をつくりたいと思っています。スポット的にシフトを変化させることで、繁忙期でも残業を増やすことなく対応できるようにしたいです。
岡田さんスタッフの皆さんもそれぞれご家庭の事情もあって、急にチームを離れなければならない場合もあると思います。その場合でも業務遂行に支障が出ないように体制をつくっていただけるとうれしいですね。